映画『ビバリウム』ネタバレありレビュー(サスペンススリラー)

映画紹介
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迷い込んだ住宅街から抜け出せない——。映画『ビバリウム』は不気味で謎だらけの展開が続く一作です。今回は、観て感じたことをレビューしたいと思います。

※この記事ではネタバレがあります。未視聴の方はご注意ください。

※こちらの記事は私が映画を観て感じた個人的な感想です。

好みや受け止め方は人それぞれですので、「こんな意見もあるんだな」くらいの気持ちで読んでいただければ幸いです。

あらすじ

不動産屋に紹介された住宅地から抜け出せなくなったカップルの運命を描いたサスペンススリラー。新居を探すトムとジェマのカップルは、ふと足を踏み入れた不動産屋で、全く同じ家が建ち並ぶ住宅地「Yonder」を紹介される。内見を終えて帰ろうとすると、すぐ近くにいたはずの不動産屋の姿が見当たらない。2人で帰路につこうと車を走らせるが、周囲の景色は一向に変わらない。住宅地から抜け出せなくなり戸惑う彼らのもとに、段ボール箱が届く。中には誰の子かわからない赤ん坊が入っており、2人は訳も分からないまま世話をすることに。追い詰められた2人の精神は次第に崩壊していき……。

感想

映画『ビバリウム』を観終わったあとにまず感じたのは、「結局これは何が言いたかったんだろう?」という強烈な置き去り感でした。序盤は不可思議で先が読めず、観客をぐいぐい引っ張る力があるのに、物語が進むにつれて謎が謎のまま膨らむだけで、意味が掴めないまま終わってしまいました。

特に気になったのは、あの“子供”が何者なのかという点です。人間の子に見えて、明らかに普通ではなく、鳴き声も人間離れしていて不気味。親の後をついて真似をしたり、異様な成長を見せたり、急に激しく叫んだりと、あらゆる行動が「人間とは異なる生き物」だと強調されていました。あの奇怪な鳴き声も、本来の姿を隠しきれない生態的な特徴のようで、この世界の“住人”が人間の模倣をしているだけなのだと感じさせます。結局のところ子供は、この町を維持するために送り込まれる“次の世代の管理者”のような存在で、人間はただの使い捨て――その冷徹な構図が胸に残ります。

そして、あの奇妙な住宅地・ヨンダーは何だったのか。どこまで行っても同じ家、同じ空。そして地図のように整った街並みは便利さや安心感を装いながら、実際には出口のない檻のよう。まるで、生物を観察するための巨大な実験装置のように見えました。タイトルの“ビバリウム”(生き物を飼育・観察するための人工的な環境)を考えると、あの町は「人間を繁殖・観察するための飼育箱」で、人間の営みは外から見ればただの実験データであって、尊厳など存在しない世界なのだと分かります。

違和感が積み重なっていき、抜け出せない閉塞感や心理的ストレスがリアルに伝わってきます。しかし中盤になると、カップルが徐々に疲弊していく描写が長く続き、同じような場面が繰り返されているように感じてしまい、中だるみしてしまった印象があります。そのだらだらした時間こそが意図された“囚われの生活の退屈さ”なのかもしれませんが、観客としてはストーリーが停滞しているように思えてしまいました。

結局、この映画が伝えたかったのは、人間が日常で当たり前に送っている「家を持ち、共に暮らす」という営みを、まったく別の視点から見たときの滑稽さや脆さなのかもしれません。外側から見れば、人間の生涯はただ生まれ、育て、老いて終わるという繰り返しにすぎず、その意味を求めても答えは返ってこない。そんな冷たくも残酷なテーマを、寓話的に描いた作品だと感じました。

ただ、哲学的なメッセージ性はあるものの、観客に解釈をほぼ丸投げしている部分が多く、終わった後にモヤモヤが残るのも事実です。疑問に作品自身が答えてくれないので、楽しむよりも困惑の方が勝ってしまいました。途中までは面白さを感じた分だけ、後半の迷路のような展開に消化不良を抱える映画でした。

 

 

📌 最後に

今回の作品の個人的な評価は ★★★☆☆(5点満点中) です。

映画の雰囲気やストーリーは引き込まれる内容で良かったと思いました。なんだったんだろ?とまた観たくなったら観てみようと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

 

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