今回は映画『顔を捨てた男(A Different Man)』を観た感想をレビューをしていきます。
※この記事ではネタバレがあります。未視聴の方はご注意ください。
※こちらの記事は私が映画を観て感じた個人的な感想です。
好みや受け止め方は人それぞれですので、「こんな意見もあるんだな」くらいの気持ちで読んでいただければ幸いです。
あらすじ
主人公・エドワードは、顔が大きく変形する病気を抱え、人目を気にしながら孤独な日々を送っていました。ある日、新しい治療によって別人のような顔を手に入れ、新たな人生を歩み始めます。しかし、過去の自分をモデルにした舞台や、同じ病気を抱えながらも前向きに生きる男との出会いをきっかけに、思いがけない運命へと導かれていきます。
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感想
『顔を捨てた男』は、「もし外見が変われば人生は本当に幸せになるのか?」というテーマを描いた、とても考えさせられる作品でした。
主人公・エドワードは、顔が大きく変形する病気を抱え、内向的で人との距離をうまく縮められない男性。平凡で孤独な毎日を送っていましたが、隣の部屋に越してきた劇作家志望のイングリッドとの出会いをきっかけに、彼の人生は大きく動き始めます。
前半はじっくりと人物描写が続くため、テンポはあまり速くありません。それでも「この先どうなるんだろう」と気になり、最後まで引き込まれてしまいました。
特に印象に残ったのは、エドワードの部屋が上階からの水漏れ被害に遭う場面。あまりにも悲惨で、見ていて本当に気の毒になります。そんな不運が続く中でも、イングリッドはエドワードに興味を持ち、ぐいぐい距離を縮めていきます。人との距離感が近すぎるくらい積極的なイングリッドに対し、自分に自信のないエドワードは一歩引いたまま。もどかしい関係が続いていきます。
やがてエドワードは治療によって新しい顔を手に入れ、名前も変え、まったく別人として新たな人生を歩み始めます。
そんなある日、偶然イングリッドの姿を見つけたエドワードは、彼女の後を追って小さな劇場へ。そこには「オーディション エドワード」という貼り紙がありました。
イングリッドは、かつてのエドワードをモデルにした戯曲を書いていたのです。
正体を隠したままオーディションを受けるエドワード。しかし反応は今ひとつ。そこで舞台用の「昔のエドワードの顔」のマスクを被って再び挑戦します。
皮肉にも、自分が捨てたはずの「昔の自分」を演じることになり、エドワードは過去と向き合わざるを得なくなります。
さらに物語を大きく動かすのが、エドワードと同じ病気を抱えるオズワルドの登場です。
彼はエドワードとは正反対の性格で、明るく社交的。病気を引け目に感じている様子はまったくなく、誰からも愛される魅力的な人物でした。同じような外見でも、これほど人生が違うのかと驚かされます。
そんなオズワルドに対し、エドワードは次第に強い嫉妬を抱いていきます。「顔を変えたのに、なぜ自分よりオズワルドの方が愛されるのか」という劣等感が、彼を少しずつ追い詰めていくのです。
私が最も印象に残ったのは、イングリッドとエドワードがようやくいい雰囲気になったベッドでの場面です。
イングリッドは、舞台で使う「昔のエドワードの顔」のマスクを被ってみてと頼みます。エドワードはそれに応じますが、イングリッドは笑いながら「間抜けすぎるでしょ」と笑います。
もちろんイングリッドは、そのマスクが本当にエドワード自身の昔の顔だとは知りません。
しかしエドワードにとって、その顔は自分自身であり、人生そのものです。そのため、自分の存在そのものを笑われたように感じ、深く傷ついてしまいます。
ただ、この場面は解釈が分かれるところでもあります。
イングリッドは本当に昔のエドワードを笑っていたのでしょうか。それとも、舞台用のマスクを被った新しい顔の男性というアンバランスさがおかしくて笑っただけなのでしょうか。
映画はあえて答えを示さず、観る人それぞれに考えさせる演出になっています。この曖昧さこそが、この作品の面白さだと感じました。
その後、エドワードは嫉妬心を抑えきれず演劇を壊してしまい、自身も大怪我を負います。リハビリ生活を送りながら、イングリッドとオズワルドとの共同生活が始まりますが、いつしか二人は結婚し、イングリッドは妊娠。エドワードが夢見ていた未来を、オズワルドが手に入れていく姿は非常に残酷でした。
精神的に限界を迎えたエドワードは理学療法士を刺してしまい、刑務所へ。
出所後、偶然イングリッドとオズワルドに再会し、一緒に食事をすることになります。最後にオズワルドはエドワードへ「君らしいね。昔と全然変わってない」と笑顔で声を掛けます。エドワードは張り付いたような笑顔を浮かべ、笑い声を上げるところで映画は幕を閉じます。
エドワードは「顔さえ変わればイングリッドに愛される」と信じていました。しかし実際には、顔を変えても幸せにはなれず、一方で同じ病気を抱えたオズワルドは、そのままの姿で愛され、家庭を築いていきます。
つまり、この映画が描いているのは「人生を決めるのは外見ではない」ということ。本当に人を苦しめているのは、自分自身の自己評価や劣等感なのではないかという、とても皮肉で深いテーマでした。
エドワード役のセバスチャン・スタンはこの作品で初めて知りましたが、演技はもちろん、歯がとても綺麗で、つい歯ばかり見てしまいました(笑)。重いテーマを扱った作品ですが、観終わったあとも長く考えさせられる、とても印象的な一本でした。
📌 最後に
今回の作品の個人的な評価は ★★★★☆(5点満点中) です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!



